━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━             □■ パワハラの法制化 ■□ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ *改元となった令和元年、5月29日に法改正が国会で可決・成立し、パワーハラスメン  トに関する規定が「労働施策総合推進法」に新設され、大企業は2020年4月、中小企  業は2022年4月に施行されます。  企業に対し、相談体制の整備や被害者への不利益な取扱い禁止を義務づけており、  繰り返し違反した場合には、国が企業名を公表できるようになります。  セクハラは「男女雇用機会均等法」で、マタハラは「育児・介護休業法」で、企業に  防止義務が定められていましたが、パワハラについては対策を義務付ける法律があ  りませんでした。ようやくのパワハラ防止法の成立となりました。 *法改正によりパワハラの法律上の定義は、  職場において◆優越的な関係を背景に◆業務上必要な範囲を超えた言動で  ◆身体的・精神的苦痛を与え◆就業環境を害すること  と定め、“行ってはならない”と明記しました。 *パワハラの行為類型…どのような行為がパワハラになるのか(2012厚労省有識者会議)  @身体的な攻撃…暴行・傷害 A精神的な攻撃…脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言  B人間関係からの切り離し…隔離・仲間外し・無視  C過大な要求…業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害  D過小な要求…業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、  仕事を与えない E個の侵害…私的なことに過度に立ち入る *上司から部下へのいじめ・嫌がらせだけではなく、先輩・後輩間や同僚間、更には  部下から上司に対して行われるものも含まれます。(同上) *パワハラ研修をすると「パワハラと言われるから、部下の指導ができない」との質問  を必ず受けます。モノ言わぬ上司問題です。  業務遂行のための指示や指導、注意であれば問題はありません。  が、業務目的から外れた表現はNOなのです。  ハラスメントかどうかは、犯罪性の有無で判断が可能だと思います。  つまり、暴力は刑法上NOです。暴言は名誉棄損の観点からNOです。  人格や尊厳を傷つける言動は、絶対に許されないのです。  被害者にとっては一時の負荷だけに留まらずに、その後の人生に多大なダメージを  与えてしまうのです。 *パワハラと業務指導との線引きが難しいと言われますが、社員同士に信頼関係があり、  サポート体制がある職場ならパワハラは起きないのです。業務指示はメールのみで  人間関係が希薄で、互いに孤立してフォローし合う関係が無いところでパワハラは  起きやすくなるのです。働く私達は、お互いを大切に思い、互いの能力を発揮できる  職場で働く権利を持っているのです。 *大切なのは、社員同士の信頼関係が有るか無いか。  職場や会社組織に、人権尊重の意識や文化が有るか無いか。  パワハラは、当事者間のやり取りだけで起きるのでは決してありません。  職場にも会社組織にも問題があるからパワハラが起きる、という認識を持たないと、  根本的な解決にはならないと痛感しています。  *2003 年に開業してから約7 万人のカウンセリング臨床を経て、パワハラやセクハ  ラの ハラスメントが発生する現場には共通する事項があります。 ●5Sが出来ていない  職場環境改善の基本である5Sとは、【整理・整頓・清掃・清潔・躾】のことです。  これが指導不足で徹底されていません。私が顧問に着任するまで5S自体を知らずに  指導もしていなかった組織もあり、愕然としたことがありました。  自分で汚したものは自分できれいに掃除する、という躾教育がされていないのです。  清潔感と責任感、それに平等な仲間意識を育む上で、5Sは肝心要だと思います。 ●挨拶が出来ていない  人間関係の良し悪しは、空気感に表出します。  仲良しの職場は空気感が、明るく軽快で笑顔があります。が、人間関係が悪い職場は  空気感が、暗くて重くて笑顔が無く、聞こえてくるのはPC の打音だけです。  人間関係が出来ているとは、挨拶や声掛けが出来ている、ということです。  挨拶とは、あなたの存在を認めていますよ、という承認欲求を満たす行為です。  それが無いのです。 ●ハラスメントの加害者は殆んどが、家庭不和の問題を抱えている  本来は癒しの空間である家庭で、いろいろな問題があるから、いつもイライラしている  という気分障害があり、上司であれば役付という職権を乱用して、パワハラがしやすく  なります。現場では組織の問題の他に、個人が持つ特性も含めてプライベートでの問題  が多々あるのです。 ●解は現場にあり  ハラスメントの被害者が加害者だった、という驚きの現実は多々あります。  私はハラスメント対応の場合、被害者との面談と共に、加害者や周囲の第三者との面談  も必ず行います。そうしないと、真実は解らないからです。  問題解決の為には、冷静に客観的に正確な情報を集め、二次被害が発生しないように、  細心の注意を払い、関係者の心身の不調がこれ以上にならないようにケアしていきます。 ●労いの言葉が無い組織  仕事は信頼関係で成り立っています。なのに、労いの言葉を言われたことが無い部下、  労いの言葉そのものを知らない上司、が多くいるのです。  「お疲れ様」「ありがとう」「大変だったね」「ご苦労様」という、人として自然に出る  べき真心からの温かい言葉のやり取りが無いのです。 ●セクハラのストーカー化  この段階になると犯罪行為ですが、現場ではあるのです。被害者は受けた行為が皮膚感  覚に残ってしまい、人生が変わってしまうのです。その上にストーカーを受けるという  負荷は甚大で、命が脅かされてしまいます。  問題の核は、ハラスメントをするような人がなぜ上司になれたのか、ということです。  当然、会社組織の任命責任が問われます。  人格を見抜くことが出来なかったがために発生した事案が、年々多くなっています。 *ハラスメント対策は、組織の危機管理なのです。  危機は必ず発生するものですから、どんな会社組織でも必ず発生するのです。  だから、ハラスメントはあってはならない!絶対に許しません!という精神論だけでは  危機対策には全くならないのです。  ハラスメント対策とは、あくまでも会社組織管理の重要な一環として、組織の危機対応  なんだとの意識を持って経営者は臨んで頂きたいと切望致します。  社員の方々をもっともっと大切にする令和の新時代を創っていきたいと決意しています。