━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━         ◇◆ 薬の前に、生活習慣を見直してみませんか? ◆◇ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ *人事異動を受けて、新しい部署・新任管理職で奮闘している多くの人達がいます。  私は顧問先でのカウンセリング外来で、過労状態に入り軽度の抑うつ状態が確認さ  れた時、直ぐには心療内科への紹介状を作成しません。  何故なら、その殆どが生活習慣がひどくて、この生活なら過労や抑うつ状態になる   のは当然だな、という内容だからです。  なので、先ずは生活習慣の改善を指導します。特に、睡眠と食事です。 *精神疾患は全てが脳の病気です。だからこそ、脳を休ませる「睡眠」と脳に栄養(ブ  ドウ糖)を入れる「食事」が最重要となります。  ところが、寝る直前までPCやスマホのブルーライトで脳に刺激を与え続けていた  り、寝るのはいつもAM 1:00や2:00頃だったり、脳を興奮させてしまうアルコー  ルやたばこを寝る直前まで常用していたりします。  更に、仕事が忙しいのを理由に食事をまともに摂らず2食欠だったり、朝食は中学  生時代から食べていなかったり、残業過多で真夜中に夕食を摂っていたり、と散々  な状態なのです。  睡眠と食事の不安定が脳やこころにどのような影響を与えるかという心理教育を行  ない、本人に納得していただき、生活習慣の改善ができているかどうかをサポート  しています。それでも過労や軽度の抑うつ状態が回復しなければ、必ず紹介状を作  成して心療内科へ確実につなげ、治療継続を見守っていきます。 *1ケ月前、40代の中間管理職のAさんは、新しい部署で部下がミスを出してしまい  胸痛・胸部圧迫感を訴えて来所しました。責任感の強いAさんは自身の指導力の無  さを責め、「役付きは自信がない」と上司へ申し出たようです。  初診のAさんは、見るからに過労状態でしんどそうでした。思考も抑制が入ってい  る様子で、最近「毎朝で言葉が出てこないんです」と訴えました。部下思いの人柄  のいい方でした。本人は不調を心配して内科受診、多々検査しましたが異常無しと  言われ、更に心配になって来たとのことでした。  軽症の抑うつ状態が確認されましたが、私は抑うつ状態のことを“プチうつ”と表  現しています。その言い方のほうが自信を無くして不安に思っている方々には、優  しく分かり易いからです。Aさんが頑張り過ぎたので、脳が少しお疲れモードのプ  チうつに入っているようですね、と申し伝えました。  生活習慣を伺うと、朝食は3年前から未摂取、アルコールは毎日1,5Lを飲酒、たば  こは毎日20本1箱の喫煙状態でした。睡眠は、「いろいろ仕事のことを考えてしま  い」ベットに入っても2:00や3:00頃まで寝れないとのこと。  よくここまで踏ん張ってきましたね、お疲れ様でしたね、と労いの言葉をかけると  ウルウルし始めて、せきを切ったようにこれまでの思いを話してくれました。  精神疲労のメカニズムを説明して保健指導を行い、Aさんに今晩からしてもらいた  いことを丁寧に説明しました。パーソナリティーがノーマルで素直なAさんは、熱心に聞い  てくださり、「今晩から試してみます」との返答でした。  1ケ月経過観察をしても今日のような状態が続いている場合には、私が心療内科へ紹  介状を作成して受診してもらうことも申送りました。  それから1ケ月後、Aさんはスッキリした顔で笑顔でルームに入ってきました。  飲酒は1/3に減らして、土日のどちらかは禁酒したそうです。たばこも約束した  寝たばこは止めて少しずつ減らしている様子。睡眠は、23:00には寝るように生活  習慣のリズムを変えているとのことでした。  私が生活習慣を改善した人にいつも聞く質問→いつからどんな風に変わってきまし  たか?を聞くと、「2週間位経ってから、目が覚めると朝がすっきりして身体が軽く  なってきたんです。この頃は落ち着いてきたかな、と思います。」また「朝礼の時、  言葉が前のように出るようになって、言いたいことが言えるようになりました。」  ニコニコと話すAさんを見ていると、私も本当に嬉しくなってきます。  1ケ月前に辛そうだった胸痛は?と聞くと「あ、そういえばないですね」には二人で  良かったね、と大笑いでした。役付きはどうされますか?自信が無いなら業務軽減  措置で少しの期間留保してもらうように私が会社へ意見指導することもできますよ、  と言うと、「もう少し頑張ってみようかな、と思えるようになりました。」との返事。  軽度の抑うつ状態は、生活習慣を見直すことで改善していきます。国内最多26,000  人の臨床実績を持つ産業カウンセラーとして申送り致します。 *日本うつ病学会の『治療ガイドライン 大うつ病性障害』平成24年7月26日作成  では、『軽症うつ病』には、基礎的介入なしに、安易に薬物療法や体系化された精神  療法を行うことは厳に慎まなければならない、と明記しています。    ↓  『軽症うつ病の治療の基本は、患者背景や病態の理解に努め、支持的精神療法と   心理教育を行うことにある。この基礎的介入なしに、安易に薬物療法や体系化   された精神療法を行うことは、厳に慎まなければならない。   現段階でプラセボに対し確実に有効性を示しうる治療法はほとんと存在しない   が、基礎的介入の上で、新規抗うつ薬を中心とした薬物療法、認知療法・認知   行動療法等の体系化された精神療法、あるいは双方の併用が検討される。   実施に当たっては、医師がさまざまな観点から治療選択を検討して患者への提   示を行い、その上で患者の希望や、費用や治療へのアクセス等の実現可能性を   考慮した上で決定することが推奨される。   運動や食事などの補助的治療法を含め、今後さらに軽症うつ病に関するさまざ   まな研究が発展し、特に日本における良質なエビデンスが報告され、より適切   な治療選択への判断材料が蓄積されることを期待する。』  基礎的介入とは、・患者背景・病態の理解・支持的精神療法・心理教育のことです。  これらができた上で、・薬物療法・認知療法や認知行動療法の体系化された精神療法  また双方の併用で治療すべきであるとの教示です。   *前述のAさんだけではありません。薬の前に悪しき生活習慣を改めた方々からは、  ・朝食を少しずつ食べ始まったら、午前中が違うもんですね。  ・朝から“力”が入ります。  ・以前は集中力もなくボーっとしていたけど、思考が止まる時が無くなりました。  ・最近は朝からサッサと仕事に入れます。  ・生活習慣を変えることでこんなに身体が変わるなんて、ビックリしました。  等々、嬉しい報告が届きます。   *食事も満足に摂らず、睡眠不足な生活をして、アルコールやたばこは無制限摂取。  こんな生活を送っている人に、お薬は効きません。逆に危険な処方薬となります。  今、精神科の先生方の中には、薬偏重の治療から薬に頼らない精神医学を推進して  精神科の医療を根本的に見直そうとしている医師達が増えています。  軽症うつ病に関しては、生活習慣を見直す事が解決の第一歩になると実感します。  自分がすべきことを、一緒にしていきませんか?  あなたの生活習慣、見直してみませんか?   生きる“力”が出てきますよ。