━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━       □■□ 職場で心を病む人の増加が止まらない □■□ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━        *毎年5月・6月は、昨年の労災や自殺者に関するデータが発表される時期です。 ◇心の病での労災認定件数=268人で前年比3割増過去最多、30代が最も多 く37%・20代25%・40代23%、労災請求件数=952人で過去最高 を更新。 ◇自殺者数=33,093人で前年比2,9%増、過去2番目に多く、10年連 続3万人超、60歳以上と30代の自殺が過去最多。 *何とも、胸がしめつけられるような思いがしました。6年前に開業してからメ ンタルケアの依頼件数は年々増大して、私ひとりでの対応は不可となり弟子達 を育て10名体制、緊急時対応もあり相当な覚悟で現場に臨んでいますが、そ れでも減らない! 県内でも心療内科の開業医も多くなり、数年前よりは稼動している専門家も相 当多くなっているはず、なのに不幸は減っていかない。これが今の日本の現状 です。私は、この厳しい現況を真摯に受け止め、めげることなく更なる決意を 持って新たな動きを開始しなくてはならない、と肝に銘じました。 *またこの時期は、医学学会が多く開催される時期でもあります。精神疾患の最 新情報を勉強しながら、年に1回だけ(七夕のようですが)臨床現場で奮闘し ている先生方と会うことができます。お互いの情報交換をしながら、同時に互 いの慰労もしながらまた全国に散っていきます。私にとっては、トップギアに 入れて全力疾走している日常から一旦ニュートラルに戻す、大切な学びの場・ 確認の場、勇気をもらえる場でもあります。 *今年も学会で多くの教示や気づきがありました。 (6/6・7日本産業精神保健学会) ◇不眠症は神経症の領域。不眠というのは長く寝かせることではなく、眠れない ことにより昼間のQOLが低下すること。不眠を治療した方がうつの治りが良 い。睡眠時間は、寝かせる為のホルモンであるメラトニンが出る22:00〜 の時間で、7時間はキープしたい。 ◇摂食障害は、以前は思春期や青年期の女性に好発した疾病だったが、今では患 者層が低年齢層から結婚後や妊娠後の年齢層まで拡がりを見せている。職場で は女性の摂食障害が増えている。ニコニコしていて仕事を全て受けている女性 には要注意、声をかけてあげて下さい。 ◇発症要因が環境にあるケースよりも、本人の内的な要因にあるケースの方が復 職までに時間がかかることが示唆された。内的要因とは、パーソナリティーの 未熟さ・職務能力不足・対人関係能力不足等があげられ、これらは近年指摘さ れている復職困難なうつ病の状態像とも一致する。 ◇最近の若者の傾向として、アイデンティティーの確立不足がある。これは他者 との関りの中で育っていくものだが、他者との関りを生かせない若者が多い。 葛藤・模索・成長の経過がとれずに、葛藤で止まっている若い人達が多い。な ので自己決定が出来ない。仕事においては、依存性はあるが独立型ではない若 者の傾向がある。 ◇自殺予防の活動は「人々が困った時に身近に相談できる人や場所がある」が前 提であり、その為のネットワーク・組織づくりが目標となる。 青森県で行ってきた自殺対策のキーワードは「気持ちを伝え合う」で、地域や 学校・医療圏・職場での悩みをいつでも誰かに相談しあうことのできる「人と 場の広がり」を求めてきた。学校では小学生5、6年生を対象に、「気持ちを 伝え合う」をテーマに医師の講話や音楽療法士によるグループワークを行って きた。心の健康づくり教室では4つの約束があり、1.自分を大切にする 2.気 持ちを伝え合う、3.失敗しても挑戦する、4.ほめる、ほめられる である。 ◇労働者の自殺対策に関する研究において、最近の自殺の傾向は、大都市化・若 年化が見られる。派遣労働者における希死念慮・自殺未遂の既往は高率であっ た。転職希望者において、メンタルヘルス不調の状態にあり自殺企図があるに もかかわらず、医療機関を受診していない者が少なくないことや、相談できる 相手がいない者も多い。 救命救急センターを受診した労働者では適応障害が多く、うつ病を主たる対象 としている自殺対策において、より軽症の病態により一層の留意を払うこと、 と同時に職場環境調整など環境要因への働きかけの重要性が示唆された。 ◇対人関係療法は期間限定の精神療法で、認知ではなく感情に注目し、特に感情 を表現するコミュニケーションに注目していく。重要な他者との現在進行中の 関係と症状の関連を理解し、対人関係問題に対処する方法を学ぶことによって 症状に取り組むということを目標とする。 ◇小規模事業所においてはメンタルヘルスに対する関心の低さが示された。メン タルの病休者がいないのではなく、抱えていられないという現実がある。メン タル指針や復職支援の手引き等の行政指針や手引きの周知がされていない現況 がある。 *まだまだ沢山あり、自身の未熟さを感じます。7月にも別の学会に参加してき ます。日々進化し続ける臨床の現場にあって、私自身時代に遅れることなく、 最新のアプローチを勉強しながら進化していく所存です。 もうじき関東も梅雨が明け、過酷な猛暑がやってきます。 皆さん、熱中症にならないように、お身体ご自愛下さいますように。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━