━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━         □■□ 子どものうつについて □■□ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━       新年度を目前に控えて、この時期は環境が大きく変化する季節です。厚生労 働省の2003年の自殺者傾向の分析結果によると、月別では就職や転勤な どで大きく環境が変わる4、5月に集中していました。一方曜日では月曜日 が多く、最も少ない土曜日の約1,5倍に上っていたようです。週の始まりや4  、5月は要注意、という意識を持っていただきたいと思います。身近な人で、 少しでもいつもと違うなという異変を見つけたら、外来での治療につなげて もらいたいと切にお願いします。 このところ企業でのカウンセリング現場で、お子さんの相談が多くなってき ているなと感じています。企業でメンタルヘルスを導入するに際し、私は必 ずセミナーを実施します。日本にはカウンセリングを受けるという文化がな い上に、精神疾患に対して根強い偏見が存在しているからです。そのセミナ ーの中には「うつ病とは」という基礎知識を必ず話すのですが、それを聞い たお父さんからの相談を受ける機会がこのところ多く感じられます。もしか して家の子どもはうつなのではないか、という内容です。症状や生活状況を 伺い外来につなげていますが、結果としてうつでした、という報告をよく聞 くようになりました。2003年度文部科学省が日本で初めて「子どものう つ」に関する実態調査を行ないました。調査リーダーで日本ではまだ少ない 児童青年精神医学を専門とされている北海道大学助教授であられる傳田先生 の調査結果によると、小学生で12人に1人、中学生では4人に1人がうつ の傾向がある、という衝撃的な内容でした。詳細は著書の中で述べられてい ますので省略致しますが、やっぱり多いんだな、という実感は毎日のカウン セリングの現場で体験しています。本来うつ病というのは、心も身体も疲れ 果てた状態、ということです。こころと身体全体の病気、と理解していただ きたいと思います。大人と子供のうつに違いはありません。同じ症状が身体 にもこころにも表れます。但し、子どもの場合には大人のように体調の不調 を自覚してうまく表現、訴えができない、ということの違いがあるように思 います。大人であれば、憂うつ、という一言で表現できる症状が、なかなか うまく表現できずに登校拒否やひきこもりやイライラして周囲に当たったり します。だからこそ、身近な親が子どもの変調に早く気づいてあげて欲しい と思います。 傳田先生が教示する親が子どものうつをチェックするポイントとは、?ちゃ んと寝ているか ?食事を食べているか ?自分の好きなことを楽しめてい るか です。これは大人でも一緒です。うつの初期の身体症状としては、眠 れない・食べれない・疲れが取れない・今まで興味関心があったものがなく なる、が挙げられます。今やうつというのは、大人も子どもも家族全員が対 象になる精神疾患だと言えます。正しい知識で早期発見・早期治療に結びつ けていきたいものです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━