━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━      ◇◆ ストレスチェック制度に産業カウンセラーはどう関わるのか ◇◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  *平成27年12月1日、ストレスチェックの年1回実施が事業者の義務となりました。   (労働者 50 人未満の事業場については当分の間努力義務)   厚生労働省によると、対象となる民間の職場は全国で約16万 6,000か所、従業員数は   約2,400 万人が受検することになります。   仕事が原因の精神疾患による労災請求件数は、昨年平成26年度 1,456 件と過去最多を   更新しました。従業員の長期休職や離職が、企業経営の大きな負担になっています。  *産業カウンセラーは、このストレスチェック制度にどう関わっていけばいいのか。   厚生労働省が公布した改正労働安全衛生法に基づく指針から提示します。   →指針 =心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指   導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針。  @高ストレス者の選定における補足的面談   指針 ストレスチェックの実施方法--高ストレス者の選定   (前略)○実施者による具体的な高ストレス者の選定は、上記の選定基準のみで選定す   る方法のほか、選定基準に加えて補足的に実施者又は実施者の指名及び指示のもとにそ   の他の医師、保健師、看護師若しくは精神保健福祉士又は産業カウンセラー若しくは臨   床心理士等の心理職が労働者に面談を行いその結果を参考として選定する方法も考えら   れる。この場合、当該面談は、法第 66 条の10第1項の規定によるストレスチェックの   実施の一環として位置づけられる。  A日常的な活動における労働者からの相談対応   指針 ストレスチェック結果通知後の対応   ○ストレスチェックの結果、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があ   ると実施者が認めた労働者のうち、面接指導の申出を行わない労働者に対しては、実施   者が、申出の勧奨を行うことが望ましい。   ○事業者は、ストレスチェック結果の通知を受けた労働者に対して、相談の窓口を広げ   相談しやすい環境を作ることで、高ストレスの状態で放置されないようにする等適切な   対応を行う観点から、日常的な活動の中で当該事業場の産業医等が相談対応を行うほか   産業医等と連携しつつ、保健師、看護師若しくは精神保健福祉士又は産業カウンセラー   若しくは臨床心理士等の心理職が相談対応を行う体制を整備することが望ましい。  B集団分析結果に基づく職場環境改善に関わる助言   指針 集団ごとの集計・分析の実施等--分析結果の活用   ○事業者は、ストレスチェック結果の集団ごとの集計・分析結果に基づき適切な措置を   講ずるに当たって、実施者又は実施者と連携したその他の医師、保健師、看護師若しく   は精神保健福祉士又は産業カウンセラー若しくは臨床心理士等の心理職から、措置に関   する意見を聴き、又は助言を受けることが望ましい。  *ストレスチェック制度では、高ストレス者と判定された労働者が医師の面接指導を受け   ることが本道です。そのためには労働者が事業者へ申出する必要があります。   しかし、会社へ申出する社員は殆どいません。これが現状です。   開業以来12年間、10万人のストレスチェックを実施してきた当方でも同じ結果です。   更に申出をした場合には、結果が実施者から事業者へ提供されますから、申出は皆無と   なることが予測されます。   ここで、『会社へ申出して医師との面接指導は受けたくないが、高ストレス者の結果を受   けて心配だから専門家へ相談はしたい』と思う社員への対応こそが、産業カウンセラー   の本領域です。そのために、日頃から相談窓口を広げ相談しやすい環境を作ることで、   高ストレス状態の社員が放置されないように、社内のメンタルヘルス体制の整備が重要   になります。  *ストレスチェックでは、検査調査票の回答を点数化して高ストレス者を選定します。   しかし、受検者は正直に記入しているのか、という問題があります。   本当は眠れない社員が「眠れる」と記入していたり、上司とは気軽に話ができないのに   「かなり」話ができると記入していることが、実際に本人と面談をするカウンセリング   の現場では多々あります   なので、記載内容を確認しないで結論を出していいのか、という問題があります。   心理テストを実施する場合は、テスト結果を参考に本人と面接を行い、両方の結果を併   せて判断するのが原則です。   ストレスチェック実施時の確認作業として、実施者の指示に基づいて面談をすることは   重要事項だと思います。  *ストレスチェック制度では、産業医が実施者となり主たる業務を担います。   しかし、嘱託産業医が多い中でその負担は多大です。実際私の元には事業場からの依頼   の他に、産業医からの依頼が急増しています。   「開業していて外来診療を抱える中で、ストレスチェックの実施まで引き受けられない」   「メンタルは私の専門外なので」等々の声を聞きます。   産業カウンセラーが産業医との連携を強化することで、主たる実施者である産業医のス   トレスチェックに関する仕事量も軽減されます。  *世界初のストレスチェック制度と言われています。   3大目的である、   ●メンタル不調の未然防止の一次予防   ●ストレスへの気づきを促す   ●ストレスの原因となる職場環境の改善につなげる   これらが遂行するように、産業カウンセラーが活躍すべき時代の到来です。   それは同時に、心理職の専門家としての実力が問われることでもあります。   私の来年2016年のスケジュールは既に12月まで埋まっています。   毎日連続する産業保健の現場の最前線で、襟を正しながら臨床を積み上げながら   尽力していく決意です。                                       以上