━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━        □■□ 2007 September・October □■□ 〜SOS!いのちのメール、生きたいをつなぐ〜  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━        *9月10日はWHOが設定した「世界自殺予防デー」です。それを受けて、 日本でも今年から9月10日〜16日を「自殺予防週間」として、9年連続 3万人を超えている自殺を何とか防ぎたい、大切な命を何としても守りたい、 という思いから設定されました。NPO法人ライフリンクは、101名の自 殺者遺族の実態調査を行い内容を発表して下さいました。今後1000名を 対象に継続していくようですが、私は尊い事業だと敬服しております。 その内容の中で、@自殺の原因は複数であった→66%A亡くなった方々の 70%が外部相談窓口に相談をしているBその内、約半数が亡くなる前1ケ 月以内に医療機関等の専門相談窓口に行っている、という結果でした。 窓口に足を運び、声をあげているのに救えない、解決につながっていない実 態がありました。どんなに辛いしんどい思いを抱えて最後のSOSを出した のか、と思うと何とも無念で仕方がありません。窓口に行ったのに職場へ家 庭へ治療へと確実には結びついていないのです。思いをどう受け止めて、つ なげて、大切な命を守っていくのか。もっともっと我々は真剣にならなくて はいけない、と痛感した結果内容でした。 *私の顧問先企業では、SOSのメールを私自身がダイレクトに受ける窓口を 設定しています。企業へ月数回訪問して、現場でカウンセリング外来を受け ているにもかかわらず、年々その総数は増加の一途をたどっています。 私自身はメールカウンセリングは行いません。人には、言語的情報=言葉: メールで伝え作れる内容と、非言語的情報=目の輝きや顔の表情、声の調子 :ビジュアルから得られる情報、があります。カウンセリングは、言葉以外 の非言語的情報が最重要と確信していますので、必ずひとりひとりと一対一 で面談を実施します。それでも治療中の方々の中には、どうしても不安にな り誰かに伝えたい思いが出てくる場合があります。その時の為に顧問先では 窓口を設置しているのです。 *今年は5月連休明けも夏休みのお盆明けにも、すごい数のSOSメールを受 けました。少し、私のPCから生の声を提示してみます。 ・先生、もうどんなに踏ん張ってみても無理です。こんなに辛いなら、いっ そ、と思ってしまう。そんな波がいくつもいくつも押し寄せてきて、この ままだと潰されてしまいそうです。苦して辛くて、どうしようもありませ ん。 ・仕事が積み重なっている中、ひとつひとつに指摘を受けそうな感じがして、 日々周囲に脅威を感じています。うまく言い表せませんが、消えたくなっ てしまいたいです。 ・自分はもういらない人間かもしれません。もう何をどう頑張ればいいのか、 わからなくなりました。 ・昨日自分の感情のまま、妻や子供に当り散らしてしまいました。最低の男 です。生きていく価値なんか無い人間です。もう落ちるとこまで落ちてし まった。 ・先日通院で主治医の先生に相談したら、職場の環境については藤井先生が 相談に乗ってくれるから、もう一度相談してみて下さいと言われました。 もう相談する所がありません。最後に藤井先生どうしたら良いか教えて下 さい。自分は孤独でしかたがありません、ひとりぼっちです。 *こんな命からのSOSメールが、私の元には月に何通か届きます。 で、私はどうするか。 先ずは、その日の内に!必ず返信を出します。これは、私がカウンセラーを 生業と決めた時からの原点の決意です。国内でも海外でもどこの出張先に居 ても、必ずその日の内に返信をしています。絞り出すようないのちの叫びの SOSに、私は全力で応えていきたい!その最初の動きが、その日の内の返 信です。叱咤激励でもどんな言葉であっても、その日付の内に返信です。 返事を今か今かと待っているのです。そして、その方の関係者:家族、主治 医、会社のメンタル担当責任者、産業医、保健師へ直に連絡を取り、情報の 共有をして、ご本人に万一が決して無いように万全の体制を作ります。何と しても命を守りたい、という連携が人を生かすと実感しています。 *自殺していい命など、ひとつも無いのです。SOSのメールを送信してきた というのは、死にたいからでは決してないのです。生きたい!けど生きづら くて辛く苦しいから送信してきたのです。であれば、何としても生きたい、 その思いをつなげていかなくてはならないのです。人としてです。 会えるまでに期日がある場合には、その間も万全の体制をとります。どこに 居ても途中経過が入るように、主治医ともしっかり連携を取り合い情報の共 有をしながらです。そしてようやくご本人と再度のカウンセリングで会えた 時、私の必死さが伝わるのでしょうか、死に向かっていた命が、生へと向き を変えていきます。そうなるまで私は決して諦めません。心理職は諦めては ならないのです。かけがえの無いひとつの命を支えるということは、生半可 な中途半端な決意ではできないのです。私に不動の覚悟があるかないかが試 される時です。その覚悟がなければ、クライアントの命を生への方向に転換 することは出来得ないのです。    *生きたい!をつなげていく作業を、私は微力ではありますが毎日させて頂い てます。受信したメールの方々は全員、今では普通の生活を送っています。 間に合いました。本当によかった、有難い、と安堵する一瞬です。 人間はそんなに強くはないのです。だからお互い様で支えあっていけばいい じゃないと私はいつも言います。人はひとりでは生きていけないのですから、 皆で支え合って生きていきませんか。あなたの周りにいる方は今日元気にし ていらっしゃいますか?そしてあなたご自身は、今こころが辛くなっていま せんか? あなたのこころ、晴れていますか?    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━