━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━          ◇◆◇ 2006神無月のコラム ◇◆◇    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ *最近報道されるニュースが痛ましいものばかりで、そして責任逃れの場面ば  かりで、何ともやるせない思いでいます。  子供達に起こっている現況は、そのまま大人社会で起こっている出来事だと  私は実感しています。 *毎日毎日、職域における様々な現場の中にいます。  精神疾患:とにかく多いうつ病や神経症、適応障害等々の心療内科で加療中  の方々、中には精神科領域の方々も沢山いらっしゃいます。そして社員の方  から鳴り響く深夜のSOS連絡での未遂の現場、又ご不幸が発生した組織へ  の緊急のポストベンション支援:遺された人々に及ぼす心理的影響をできる  限り少なくするためのケアの実施。このところ困難な案件が私をめがけて追  っかけてくるような、そんな感じがするくらいの現場を毎日過ごしています。 *過去のコラムでも提示してきましたが、疾病というものは本人が先ず病気で  あるという現実を受け入れて、治していこうという気持ちが無くては回復し  ていきません。  その構図は人々の集団である組織にも同じことが言えます。  万一の不幸が発生しても歯止めがかかる組織とそうではない組織の差という  のは、現実を本気で受け止めているかどうか、真実を真摯に受け入れて、組  織が一丸となって改善していこうという気概があるかないかだと現場に入る  度に実感します。 *私自身過去に何度もポストベンション支援を実施してきましたが、不覚にも  ご不幸が発生してしまった組織には共通するものの存在が見えてきます。  家庭も同じです。それは、現場の社員の本当の姿を全く知らない、見えてい  ない、人に対する気遣いが感じられない、そして責任を取る人がいない無責  任な組織、ということです。  悲惨な不幸は起きるべき組織で発生する、と私は実感しています。 *だから利害の無い第3者として、経営幹部の方々には相当に厳しい指導を役  員会等々で進言させていただいています。人の命を守る、ということは生半  可な気持ちでは守りきれないのです。  一瞬一瞬職域でのカウンセリング現場は、真剣勝負そのものです。  だから一緒に改善への一歩を踏み出して下さい、と全魂を込めて進言してい  ます。 *カウンセリングには二つに大別できます。治すためのカウンセリング、これ  は精神科医師や臨床心理士の先生方が行うものです。我々産業カウンセラー  は、育てるカウンセリングを行います。その根底には、人間には自己成長し  ていく力が存在する、という人間観に立っているからです。  つまり、「人間には、自らを維持し強化する方向に自分自身を発展させよう  とする自己成長力が備わっていて、自己を実現しようとする力を持っている」  (カール・ロジャーズ)だから、その成長を阻害しているものが取り除かれ  れば、自らの力で成長できるはずなのです。組織も全く同じだと、私は思い  ます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━